Sentimental  Fantasy
〜創世神話と神々と〜

◆ 神話は語る

 遥か昔、悠久の刻の彼方に過ぎ去りし時代。その空間は混沌に包まれていた。
 混沌・・・それは世界の始まり。あまねく意志たちがひしめき合い、混ざり合いひとつの世界を形作っていた。何万年もの間、その状態は続いた。

 ある時渦巻く混沌の中から一つの意志が飛び出した。多くの意志の中、最初に飛び出した意志が後に邪神と呼ばれる存在となった。
 そしてその意志を追いかけるように、また一つの意志が飛び出した。二つめに飛び出した意志は後に大神と呼ばれる存在となった。

 一つ目の意志は、安定した状態を壊し新たな世界を作ろうと願った。
 二つ目の意志は、安定した状態を守ろうと一つ目の意志を追いかけた。

 そして二つの意志が衝突した。渦巻く混沌から飛び出せるほどの力を持った意志たちのぶつかりあいは、予期せぬことをおこした。一つ目の意志が望んでいた、新たなる世界を作り出したのだ。
 新たなる世界・・・そこにはまだ何も存在していなかった。混沌に満たされていない空間があるだけで、光も何もない。
 一つめの意志はその空間に逃げ込んだ。もちろん、二つ目の意志はそれを追いかけた。

 二つの意志はさらに激しくぶつかり合った。意志と意志の衝突・・・それは、ここでも新たなる物を生み出した。
 まず最初のぶつかりあいで、暗闇の世界に光が生まれた。二度目のぶつかりあいで海が生まれた。そして三度目のぶつかりあいで大地が生まれ、四度目には風が生まれた。

 度重なる衝撃で二つの意志は徐々に力を失いつつあった。二つ目の意志は、自分が力を失っていることに気がついていた。だが、一つ目の意志はその事に気がついていない。新しい世界を生み出すことに夢中で自分の力が衰えていることなど思いもしなかった。

 ここではじめて、二つの意志の間に「願い」以外の違いが現われた。

 その差が、意志のぶつかりあいに終局を迎えさせることになる。己を知らぬ一つめの意志は、己を知る二つ目の意志に討たれた。

 だが・・・二つ目の意志の願い「安定」を守る為に、一つ目の意志の願い「新世界」が生み出された。それぞれの願いはかなえられ、そして阻止された。残った二つ目の意志は、「新世界」をもとの混沌に還すという選択肢もあった。だが、度重なる衝突で力を失っていたためその選択肢を選ぶことができなかったのだ。

 二つ目の意志が新世界で眠りにつこうとする直前、あることが起きた。消滅したはずの一つ目の意志が、再び現われたのだ。

 しかし一つ目の意志はあまりにも小さく弱く、「願い」さえも持っていなかった。

 二つ目の意志ではなく、新世界でなく別の存在。そうとしか呼べないほどの小さな存在だった。

 どんなに小さな存在であろうとも二つ目の意志と相反する存在であることに変わりない。二つ目の意志は、残された最後の力を使い再度その意志を滅しようとした。
 だが・・・それはかなわなかった。意志たちは、根元たる混沌から切り離されているように見えても切り離されることはない。力を失うことはあっても、存在自体が消滅することはないのだ。

 そして、二つ目の意志は封印という手段を使い相反する意志をこの大地に閉じ込めた。自らがその世界の安定を守る道を選んだのである。

 戦いで生み出された大地の深くに、一つ目の意志は封じ込められた。厳重な結界と束縛の封印をかけられ、再び「願い」を持たぬ様に。
 二つ目の意志も最後の力を使い切り、その大地で眠りにつく。

 その大地には、最後の衝突で生みだされた「命」が息づいていた・・・。


◆ 神々の誕生

 眠りについた二つの意志は、この世界の神となることでその力の回復を図った。
 二つの意志の衝突により生み出された「命」は、それぞれに神を信仰した。

 一つ目の意志たる神は、世界神(新生神とも呼ばれる)ディプティアと呼ばれ、
 二つ目の意志たる神は、調和神(安定神とも呼ばれる)シィルベンドと呼ばれた。

 大いなる混沌から初めに抜け出す力をもったように、その力はディプティアの方が上であった。創世神話の衝突のときには、「安定した状態の混沌」を打破した為既に力の何割かを失っており、ディプティアが穿いた「穴」を通ったシィルベンドは力を失わずにディプティアを追いかけることができたのである。そのため、二つの意志の間にあった歴然とした力の差が埋まり二つ目の意志たるシィルベンドが一つ目の意志たるディプティアを討つことができたのだ。

 シィルベンドの力によって封印されたディプティアであったが、もともとの意志力はシィルベンドよりずっと強く失った力の復活も早かった。シィルベンドは回復しつつあるディプティアに対抗する為、みずからの身体を引き裂いて彼の分身たる神々を作り出した。

 まず調和神の右手を司る神アティウスを生み、左手を司る神フリーイッドを生んだ。
 それぞれの神はそれぞれの信仰形態を持ち、ディプティアに対抗し得る力を得た。
 だが、まだ力は足りない。世界の調和を保つ為にはシィルベンドは次々と神々を生み出さなければならなかった。

 世界には数多の神々が存在している。力を持つもの、そうでないもの、それは様々である。
 だが、それは調和神シィルベンドが世界の安定を図る為に自の身を引き裂いた結果でありそうして世界の調和は保たれているといわれている。

 それぞれの神々については、のちのち詳しく述べることにする。


◆ そして世界

 物語における世界は、大いなる海原に存在するひとつの大陸である。

 創世神話の最後でも述べたように、二神の最後の衝突で「命」が生み出された。「命」は様々な形態を持っていたが、偶然にもシィルベンドの姿と良く似た「命」生み出されていた。
 それが「人間(ヒューマノイドタイプ)」である。

 地下深くに封印されたといわれるディプティアであるがその影響力は強く、厳重な結界を越え大地へと意志力を具現化させる。
 だが、ディプティアの「新たなる世界」という意志は、皮肉にも安定神の結界にはばまれてただの「破壊衝動」へと変わっている。
 ディプティアの意志が具現された形として、世界には「破壊衝動」のみの「モンスター」が闊歩するようになった。
 ごくまれに「意志力」をもった指導者的存在が生まれる事もあるにはあるのだが・・・。

 シィルベンドに属すものは、「神」と呼ばれておりシィルベンドの分身として世界の安定を守る為に存在する。
 存在するとはいえ、もともと神々は「意志」であるため実体を持たない場合が多い。
 そういった神々は「精神体(メンタルボディ)」と呼ばれる姿で存在している。「幽星体(アストラルボディ)」とも呼ばれることがある。
 また、実体をもつ神であってもその姿を見せることは皆無に等しい。

 対して、人間はどちらの神にも属していない。二神の衝突のさなかに生み出されたモノであるから自由意志を持った原初たる混沌に属するものと同等のものなのだ。
 存在意義的には二神とおなじものであるが、力を失った意志たちの最後の衝突で生み出された為混沌に属するもののような力は持たない。

 生み出された「命」たる「人間」はディプティアの分身たちと戦う道を余儀なくされていた。
 なにしろ、ディプティアの分身達の多くは「破壊衝動」しかもたない低級なものなのである。


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